溶射豆知識「溶射塾」
溶射用語の解説
- アブレイダブル溶射(abradable spraying)
- 削られやすい特性を有する皮膜を得る目的で行われる溶射。適用例として、タービン回転翼に相対するケース内壁に溶射し、回転翼が皮膜を切削することでケースとの間隙を適正化するものなどがある。
- アブレッシブ摩耗(abrasive wear)
- 接触面同士の凹凸や面間に介在する硬質粒子により、表面が削り取られていく様な摩耗形態。
- エロージョン(erosion)
- 浸食。硬質な物質が金属などの表面に衝突することで表面が削り取られる現象。
- 開口気孔(open pore)
- 溶射皮膜中の気孔のうち、皮膜表面から外部に通じているもの。
- 貫通気孔(through pore)
- 溶射皮膜に含まれる気孔で、皮膜を貫通して母材から外部まで通じているもの。
- 気孔(pore)
- 溶射皮膜は、高温熱源で溶けた粒子が高速で基材表面にぶつかり扁平状に重なり合って成膜する。
その過程で、粒子間に無数の空気孔ができる。その空気孔を気孔と言う。 - 気孔率(porosity)
- 溶射皮膜に含まれる気孔の容積百分率。
- キャビテーション(cavitation)
- 圧力の減少により液体中に気泡の生ずる現象。ポンプの羽根車や水力タービンの翼などの様に水中を高速で運動するとき、あるいは水中で超音波の様な強い音波を出すときに見られる。
- クラック(crack)
- 割れ、亀裂。溶射皮膜に生ずるクラックには、複数の溶射粒子を介する大きな割れと粒子内のみで留まっている微小な亀裂とがある。
- 研磨(polishing, grinding)
- 砥石または砥粒を介して材料に圧力を加え、その表面を微細に削り平滑に仕上げていく加工法。
- 高温酸化(oxidation at high temperature)
- 高温下での酸化現象。
- コーティング(coating)
- 物体の表面を適当な材料で被覆すること。溶射もこのための技術のひとつである。
- サーメット(cermet)
- セラミックスと金属あるいは合金とを組み合わせた複合材料。
- 残留応力(residual stress)
- 外力が生じない物体の内部に残る応力。溶射皮膜では、成膜過程での温度変化にともない、基材や皮膜の熱膨張係数差に起因して生じる残留応力が、皮膜の亀裂や剥離を引き起こす原因となる場合がある。
- 自溶性合金(self-fluxing alloy)
- ニッケル基、ニッケル・クロム基またはコバルト基の合金に、ホウ素、ケイ素を添加した合金。溶射後に再溶融処理を行うことによって密着強度が高く、気孔が少ない皮膜を得ることが出来る。
- セラミックス(ceramics)
- 材料を有機材料、金属材料そして無機材料に大別した時に、固体の無機材料を一般にセラミックスと呼ぶ。主なものに酸化物、炭化物、ホウ化物そしてケイ化物などがある。
- 絶縁(electrical insulation)
- 一般には電気絶縁を言う。電気が伝わらない状態または伝わりにくい状態。
- 耐食(corrosion resistant)
- 腐食しにくいこと。
- 耐熱(heat resistant)
- 高温下で、熱に耐えること。
- 耐摩耗(wear resistant)
- 摩耗環境下で摩耗に耐えること。
- WC(tungsten carbide)
- 炭化タングステンの略式表示。炭化タングステンそのものの代表的なものとしてはW2CとWCとが古くから知られている。
- 断熱(thermal barrier, heat insulation)
- 熱が伝わらない状態、または伝わりにくい状態。
- 超硬合金(super hard alloy)
- 溶融点の高い金属、例えばW、TiあるいはNb等の炭化物、窒化物またはホウ化物の粉体に、金属を結合材として高温で焼結した材料。結合材としてはNiやCo等が用いられる。
超硬合金は硬度が高い、材料で特に高温時の硬度低下が少ないのが特徴である。強度や弾性にも優れ摩耗しにくいことから金属の加工工具や金型などに使われることが多い。 - TBC(thermal barrier coating)
- 断熱を目的とするコーティングまたはその皮膜。
- 投錨効果(anchoring effect)
- 溶射粒子が基材の粗面に機械的に噛み合うことによって、皮膜と基材との密着度を向上させる働き。アンカー効果とも言う。
- ヒューム(fume)
- 溶射中に溶射材料が加熱されて蒸気となり、その蒸気が冷却されて細かな粒子となったもの。
- 表面改質(surface improvement)
- ただ表面を保護するだけでなく、母材には無い優れた機能を付与する表面処理。
- 表面処理(surface treatment)
- 材料表面に対してある目的をもって行われる加工処理。
- 封孔剤(sealer)
- 溶射皮膜の開口気孔に浸透し、これを密閉する材料。エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコン系樹脂などがよく用いられる。
- 不動態(passive state)
- 金属の表面に緻密な薄い酸化皮膜が形成されている状態。金属の表面に緻密な薄い酸化皮膜が形成され、内部を酸による腐食や酸化などから保護している状態。ステンレス鋼の耐食性はこれによる。
- ブラスト(abrasive blasting)
- 圧縮空気流や遠心力などを用いてブラスト材を母材の表面に衝突させて、その表面を粗面化、清浄化、活性化させること。
- フレッティング摩耗(fretting wear)
- 接触面における微小な往復滑り、あるいは振動摩擦の繰り返しが主因となる摩耗形態。
- 摩擦係数(coefficient of friction)
- 2物体間の接触面に作用する摩擦力と抗力との比を言う。滑りやすさ、または滑りにくさの指標として用いられることが多い。
- 溶射(thermal spraying)
- 燃焼または電気エネルギーを用いて溶射材料を加熱し、溶融またはそれに近い状態にした粒子を母材に吹き付けて皮膜を形成すること。
(参照文献)
- JISハンドブック 金属表面処理:日本規格協会、日本規格協会、東京(2021)
- 溶射工学便覧:日本溶射学会、日本溶射学会、東京(2017)
- 溶射技術入門:日本溶射学会、日本溶射学会、東京(2020)